html

About    Concept    Works    Contact

「ビジュアル」は如何にして制作されたか

エンターテイメントの拡張性 ビジュアル編
売れるビジュアルを作るために
※この決定法は2000年~2010年頃の文化状況を元に作成されているので、今後とも絶対的に使えるものではない。

序文
 様々なエンターテイメントコンテンツの中でのビジュアルの決定方法は、個人の主観や、好みによって判断されている部分が多く、更に売れているコンテンツをそのまま持ってくる事によって、オリジナリティの欠如、新しさのないもの、メッセージの不在といった問題を含む作品が多く流通している。ここで私が提唱したい事は、曖昧なビジュアルの判断基準にある程度の指針を与えることで、すべての経済活動に関わるクリエイターの助けになる事。「オリジナリティ」「新しさ」という、求められはせよ曖昧な言葉に対して定義付けを行うことによって、昨今のエンターテイメントコンテンツに足りない「メッセージ性」を加えることに注力してほしいという事である。


1.ビジュアルの決定方法
物語消費の変化を根拠にデータベース型のビジュアルを作成
 東浩紀著『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会』(2001)や、大塚英志著『物語消費論―「ビックリマンの神話学」(1989)』によれば、1980代頃には「大きな物語」と呼ばれる原作者の設定を享受し、エピソードを積み重ねていく「機動戦士ガンダム」や「スターウォーズ」のような「物語消費」が主流だった。しかし、昨今の「物語消費」の仕方は、「大きな物語」を絶対視しなくなった。例えば、角川書店が出版している「涼宮ハルヒの憂鬱」では、谷川流原作のノベルを発祥として、公式アンソロジーとしての漫画「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」(ぷよ著)や、ゲーム「涼宮ハルヒの約束」(バンダイナムコゲームス、2007)等が展開されている。ここから見えてくることは、原作者の提供する「大きな物語」だけでなく、2次創作者が提供する派生系としての物語、つまり「小さな物語」も同様に消費者は重要視し、楽しむようになっている。そこでは、作品の有するデータベースを参照しながら、同一の世界観の様々なコンテンツを楽しんでいくという「データベース消費」が行われている。つまり、昨今では、物語の楽しみ方は「物語消費」から「データベース消費」に比重が増してきたと言える。
 こうして考えると、消費者は何をエンターテイメントコンテンツに求めているかが見えてくる。つまり、
「データベース」の提示と「データベースを参照できるコンテンツ群」である。これをビジュアルの作成の際に生かすとすれば即ち、

連想のできるグラフィック群
連想ができる小物
バックグラウンドを感じるビジュアル
(あなたが作るお話と文脈が一致する過去の作品、又は実在の歴史から引用する)

ということになる。
作例としては、「新世紀エヴァンゲリオン」綾波レイ→「機動戦艦ナデシコ」ホシノ・ルリ→「涼宮ハルヒの憂鬱」長門有希が挙げられる。
初音ミクを用いた解説は下図を参照


Highslide JS




2.キャラクターの作り方
 前章で紹介した「データベース消費」を元にし、キャラクターも設定できる。つまりは、1次創作から抜け出しても依然として個性を有し、違う話の中でも行動が容易に想像できるキャラクターを制作する事を目標とする。概念的に言えば「大筋の外でも生きられるキャラクター」作りである。
つまり
2次創作ができるキャラクター作り。
1次創作から離れてもどう動くか想像できるキャラクター作り。
特徴が明確であり、単純であること。
がチェック要素として挙げられる。

3.オリジナルの所在
 ともすれば、連想が可能なビジュアルの設定というと、模倣を推奨しているように聞こえるかもしれないが、それは否定したい。模倣と独自性の差は、パーツの複合度合いによるもので、模倣と呼ばれるものは、元ネタの引用をしすぎている状態のことである。また、オリジナリティとは、クリエイターに要求されるものでありながら、所在のはっきりとしない曖昧なものである。ここでは、オリジナルとはどういうことかを定義することによって、前章のビジュアルの決定方法の参照にすると共に、求められていることを明確にしていきたい。
オリジナリティとはうろ覚えのこと
「オリジナリティってのはね、うろおぼえのことなんですよ
 自分が感動したものを適当に再現したら、
 それがその人のオリジナリティになるんですよ」

「資料を見て正確に書く必要は無いんです
 正解っぽく思わせることが一番なんです」

「世界はすべて、勉強の場所
 沢山見て、たくさん、うろおぼえで再現すれば
 みんなクリエイターになれます」
「パクリは余計なことまで思い出すから盗作になっちゃう。
 みんなもっと適当に覚えなさい」
http://otasyou.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-edf6.html

 「型どおりの表現」というものが何か悪いことのように言われてしまいがちなのは「パターンの組み合わせ」としてあったこの国の「文芸」の歴史が「写生文」という新しい文章に駆逐されていった背景があるからです。「パターン」とは否定されるべきもの、とついぼくたちは考えてしまうのです。
……ポイントは小説の中には極端に分ければ「写生文」的なリアリズムに基づくものと「記号」的なパターンの組み合わせに基づくものの二通りがある、ということです。……つまり実際問題としてぼくたちが目にする物語は「写生」的リアリズムと「記号」的組み合わせを相応の割合でミックスしたものです。(p78-79)
キャラクター小説の作り方 (角川文庫)
作者:大塚英志

ほとんどの作品にとってオリジナリティ何てものは存在しなくて、批判に使われるオリジナリティが無いが本当に意味しているところは、設定に意味がないということなのだよって話である。たとえば左右で眼が違うキャラクターを出したり、猫耳何でもいいけれどツンデレそういうキャラクターを作ったとする。問題なのは猫耳であることが物語に密接に絡みついてこなかったり、ツンデレというキャラが本当に何の意味もなくただツンデレだったりする場合である。こういう場合人はありきたりの設定を使ってオリジナリティが無いと感じるという。
キャラクター小説の作り方/大塚英志 - 基本読書
http://d.hatena.ne.jp/huyukiitoichi/20090312/1236861904

小林秀雄は、『モオツァルト』のなかで、「模倣は独創の母である。唯一人のほんたうの母親である。二人を引き離して了つたのは、ほんの近代の趣味に過ぎない。模倣してみないで、どうして模倣できぬものに出会へようか」とすらいう。
模倣のない独創などありえない。
山田 奨治(著)『日本文化の模倣と創造』 ~第三部 日本文化と再創主義のすすめ P.214~


4.パーツの選び方
売れているモチーフ、キャラクターの要素を細かく分解し、パクリだと思われない程度のミックスをして構成する。
連想をさせるモチーフでありつつパクリと思われないよう按配に注意。
なお、ここで提示するのは「パーツ」の設定法法であり、絵柄のことではない。
男性向け女性キャラクター造型
顔を可愛くする。エロスをどこかに加える。(対象年齢によって可変)>>オタク、ライトオタク層
又は、創作系。純粋そうな装飾過多、スタイリッシュ系>>一般、ライトオタク層
男性向け男性キャラクター造型
実在しそう(したらいい)なキャラクターにする。>>全般

女性向け男性キャラクター造型(友人による証言)
目のイケメンぶり。スタイルの良さ


5.世界観を作る上でビジュアルがディレクションすべき内容
・土地環境(寒暖乾湿、高低、地盤、気圧、風向、重力、星間)
→キャラクター、背景設定
・時代(文化レベル、教育レベル、科学技術、宗教、統治体制)
→キャラクター、背景設定
・ターゲット(ユーザー)
→絵柄
・メディア
→絵柄(情報量)


6.構図の決定方法
人がそのモチーフに対して好印象を持つ構図はある程度決まっている。
ストーリーを伝える演出もある程度決まっている。
パターンをリストアップし、一番自分のイメージに近い構図、演出を使う。


7.「新しい」の定義
オリジナリティと共に「新しさ」は、クリエイターに求められながら、曖昧な基準である。そこで
「新しい」とは「今までなかったモノとモノとの関係性のことである」と定義したい。

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
 アイデアのつくり方: ジェームス W.ヤング, 今井 茂雄


ヤングによればアイデア作成の基礎となる原理とは
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい
というふたつである。後者の才能は訓練で向上させることが可能である。ヤングは訓練の方法として、社会科学の書籍を読むことを勧めている。
アイデアの実際の生産は5つの段階を経由して行われる。
1. データ集め
2. データの咀嚼
3. データの組み合わせ
4. ユーレカ(発見した!)の瞬間
5. アイデアのチェック

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A2%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8A%E6%96%B9



 これらのチェックポイントを設けた制作方法を提案することによって、より質の高いエンターテイメントコンテンツ制作のための礎としたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿