新しい意見とは受け入れづらいものだ。だから議論はどこまでも平行線をたどり、どちらかが相手を打ち負かすまで続く。
だがこの世界には、一度自分の意見を脇へ置いて、新しい意見を受け入れた自分を試してみることができる装置がある。
この装置によって、意見を「受け入れる・受け入れない」で争っていた議論が解消され、純粋に内容で検討されるようになった。
しかし、その裏には新たな問題も潜んでいた。
その表れは、「戦争推進キャンペーン」の爆発的高まりである。
装置の正しい使途は、その人にもともとある意見と、新たに入ってきた意見を比較させることである。
だが、その人に意見がなかった場合、新たに入ってきた意見だけが存在することになる。――誰もがすべての事に関心を持つわけではない。その「意見の空白地帯」をねらったならば…。――大衆の意思をコントロールすることができる。
主人公こそが、影で人々を煽動する黒幕である。
主人公は、どんなに「戦争推進キャンペーン」が激化しようと、それが実際には起こらないと知っている。むしろその存在が、人々の危機意識に火をつけ、これに対する意見を持つだろうと考える。
だからこそ、主人公は姿を現してはならない。意見の植え付けは他ならぬ主人公の手でコントロールされなければならないのだ。
そこに現れるのは敵。
「戦争推進キャンペーン」に危機感を持ち、主人公と同じように装置を使うことを決意する。
本来なら仲間同士であるふたりの争い。
そして、本来なら共通の敵である者たちの存在。
人々から意見を消し去り、曖昧のうちに利用しようと目論む者たち。
彼らは、争う二つの陣営の片方を支持し、事態は混迷を増してゆく。
果たして、主人公とその敵は互いの意見を受け入れることができるだろうか。
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