この世界には違う「眼」を持った生物がたくさんいる。
それは見るものの違いを生む。それぞれ相手が何を見ているのか判断することはできない。
この世界で重要なのは、「自分に見えているものを知ること」「相手の見えるものを知ること」である。
高度に発達した知性は、生物としての優位性を単純な能力で決めなくした。
しかしそれとは逆に、暗号伝達のように、相手から見えない連絡手段を使うことで相手の優位に立つことが行われるようになり、有能な「眼」を持つことの優位性は増した。
「食物連鎖」の意味は、既に「眼」の優劣によって決定されている。
そこで生きなければならない盲目の主人公。
仲間に与えることができるのは、物理的な「眼」ではない。
本当の「眼」は頭の中にある。
誰もその価値を見ていなかった。
しかし主人公はそれを理解させることでしか生きる術を持たなかった。
そのうちに理解者が現れた。
最も価値の低いとされる普通の「眼」を持つ一人の男だった。
この世界で「眼」は後から改良していくものだ。
所属する生物種、信条、生まれの制約はあるものの、
大抵はなんらかの改良は受けられるようになっている。
だからわざわざこの世界構造で不利な「眼」を選ぶような存在は、
いわば変わり者であり、いわなくても変わり者である。
よほどの理由があるのだろうと思われるが、
お互い今の状態での利用価値はたかが知れている。
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