すべての物が対話する世界になると、
物との関係があらかじめ用意されているのが当然となった。
人間の要請に対する応えはデータベースに蓄積され、
模範解答が人間と物との関係となっていった。
それは科学者が仕込んだひとつのお遊びであった。
科学者が用意したのは時代を画す高性能なロボット。
本当の意味で現実をセンスし、いくつもの未来の場合分けを自ら考え、
答えを出していくのだ。
しかし論理的に正しいはずのロボットの行動が、人間の常識とはくいちがっているということが次第に明らかになってくるにつれ、人々はその異常な行動を責めはじめる。
「お約束」に馴らされた人々は、予想できない動きをするロボットに戸惑い、そしてついには破壊してしまったのだ。
科学者は納得がいかなかった。
最初はバカな人々をからかってやろうという、ただのお遊びのつもりだった。が、実際のこの世の中は堕落している。
誰一人としてそのロボットに対応できる人間がいなかったのだ。
科学者は孤独に苦しむ。
もはや人間らしい人間など、この世には残ってなかったのだと。
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