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MoNoGaTaRi #29「変の変」

「変だなんて、言わせない。」

常識的に生きてきたという自負を持つ主人公は、自分のことを「変」だと言うある人物と出会う。
「その人」は、弁論部の中では一目置かれる存在であり、「常識人」で通っていた。
主人公は「その人」に、認めさせたいと思っている。


主人公は「その人」が嫌いだった。
面と向かって「変」だと言ってくる人を、好ましく思うような心の広さは主人公にはなかったのだ。
だが、不安ではあった。

自分が「変」なのではないか、と。

そのせいで、身だしなみには特に気を遣うようになったし、
社会のことにも前以上に関心を持って、情報で遅れまいと努力した。
その結果、次第に他の弁論部員の「アラ」も見えてくるようになり、
主人公の部内での地位はどんどん上がっていった。

そして主人公は「その人」との直接対決を決意する。
このような偏った人たちの間でもてはやされている、
あなたこそ「変」だと言ってやるために。



…しかし、主人公は負けてしまう。
およそ常識的とは言えない論理でだ。
それを形容するなら「筋の通った夢物語」とでも言えよう。

「変」を貫いた存在こそが「その人」であり、
「その人」に立ち向かうために知識を取り込んでいった自分も、
そしてそのことで他のあらゆる青春的ものごとを犠牲にしてきたこと自体が、
やはり「変」であったのだろう。


「褒め言葉よ。」
と、「その人」は言った。

完全に負けた気がした。

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