情報へのリンクは、伝達のためのパイプであるとともに、
その情報の重さを支えるための柱でもある。
だから、この「島」が崩れかかっているのは必然なのだ。
主人公の住む「島」は、人間にとってあまり触れたくない問題で出来ている。
人間が肉体を棄てた世界では、リンクこそが個人を保証する唯一のものであり、
問題がリンクを喚び込むものとして、人間の住み家となっている。
より安全な「島」は、リンクが多い一般的な問題でできている。
だが、そこに住める人間にも限りはあり、現在は新しく住まうことは出来ないだろう。
そんななか、主人公の住む「島」はリンクの端に位置しており、
わざわざこのような場所を選ばなくてもいいのに、と
近所の物好き連中ですら言うほどである。
主人公は、他の問題について無関心である。
この問題のためなら、自身がいつ消えても構わないとすら思っている。
だが、そんな主人公の住む「島」に、ある日小さなリンクが伸びてきた。
そのリンクの先を辿ると、ほとんど孤立した「島」であり、
ぎりぎりで繋がっているような状態だった。
しかし驚くことに、そこにもまだ住人がいたのだ。
あまりに重くなると、自分のいる「島」を支えてくれるリンクが少なくなるのではと心配したものの、すぐにリンクを切るのではなく、まずは話をしてみようと主人公は考えた。
「案の定、ここの住人は変わり者のようだ。」と、主人公が理解するのには時間がかからなかった。
どうやらこの住人は何もないところに問題を見つけ、新しい「島」を作ることに熱心らしい…、と考える間にも、孤島の先に次々に新しい「島」が生まれているではないか。
主人公は恐ろしくなってきた。
このまま自分の住む「島」の先に新しい問題を付けられたのでは、いずれ支えられていたリンクが切れ、宙に投げ出されてしまうだろう。
主人公が今すべきことは、ただ新しく出来た「島」に、新たなリンク先を探すことだ。
次から次へと「島」が増えるたび、主人公は次から次へとリンク先を探し繋げていった。
非常に忙しい日々だった。
だがある日、くたびれ果てた主人公に「島」を作り続けていた人が振り返ったのだ。
そして意外なことを口にした。
「どうだい、君の島も安定しただろう。」
主人公が振り返ってみると、
そこにはたしかに、
いくつものリンクがクモの巣のように張り巡らされた中に、
ひと際安定した立地にある、
我が家が見えた。
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