その世界は毎日「違う太陽」が昇る。
光の波長は太陽によって変わり、生物もそれに合わせた生態系を持っている。
人間もまた、その一員である。
決まった時間に睡眠をとり、決まった時間に表に出る。
決まった範囲で生き、決まったように死んでゆく。
そう、決まっている。
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ある日主人公はいままであった「あるもの」がなくなっているのに気付いた。
正確に言うならば、「見えない」ことに気付いたのだが…。
「それ」は明日にでも自らの命の危機を生み出すもので、
つまり主人公は死の淵に立っている!
…だが幸い、それは見えないだけで、触れることはできるようだ。
あとは、毎日決まった時間にする「それ」の操作を誤らなければいい。
大丈夫、一つのボタンを押すだけで、他にボタンは付いていない。
ついにその時が来た。主人公は震える手で「それ」を持つ。
…その瞬間だった。
当たり前のように扱ってきたその装置が、
今はまるで「…」のように感じられたのだ。
主人公はボタンを押すことができなかった。
捨ててしまった説明書の代わりに、
インターネットデータベースへアクセスし、
ただ、そのボタンの位置情報だけを捜す姿がそこにあった。
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